僕は仰向けになっていた
気持ちいいほど青い空
透き通る風
そして、響き渡る声援
顔を上げると誰もが僕を見つめている
目をつむると過去の努力が頭に流れ込んでくる
血のにじむような努力。
勉強も恋愛も犠牲にして
必死で打ち込んだ
そして掴んだんだ。
優勝という2文字を。
ラケットとの出会い
僕がなぜ優勝できたのか
それは、あるラケットとの出会いにある
あれは突き刺すような日差し
蝉が盛んに泣いていた夏の日のことだ
僕はテニスが嫌いになっていた
どう頑張っても試合に勝てない
人生のすべてをテニスに捧げているのに
勉強は嫌いだからやらない
恋愛はモテないから意味が無い
だから人生のすべてだったテニス
でもひたすらに下手だった
そんなある日のことだ
夜眠っている僕に誰かが囁いている
テニスの女神様か?
「ぷーーん。」
蚊だった。
気づいたら僕はラケットを握っていた
蚊をラケットで叩こうとしたのだ
しかし、ガットの幅が広いせいか
当たらない
結局25か所も刺されてしまった
しかもラケットは折れてしまったのだ
「新しいラケットが欲しい!」
僕はオンラインショップに駆け込んだ
そこで目にした光景には目を疑った

な、なんだこのラケットは!??
通常は20000円ほどかかるラケット
それが3980円で売られているのだ
なんてお買い得なんだ!!
しかも宿敵、蚊を倒せるなんて!!
迷わず購入した。
ちのさんという人に
アフィリエイト報酬が2%いったようだが気にしない
僕はこのラケットを毎日振り続けた
雨の日も、風の日も、修学旅行の日も、バレンタインデーも。
そして迎えた地域のテニス大会
いきなりの決勝戦
僕はいつものラケットを背負ってコートに立つ
「大丈夫だ。お前とならやれる」
そう話しかけた
対戦相手のアレックスJr.は県大会出場経験者
かなりの実力者である
「HEY!またボコされにきたのかい!」
しかし、僕には作戦があった
試合前の握手と同時に手を開く
中から大量の蚊が!
アレックスJr.はひどく困惑した
彼のラケットでは、蚊は倒せない
不戦勝で僕は優勝した
天を仰いだ
「空ってこんなに青かったんだな」
こうして僕の人生が切り開かれたのだ
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